戦後75年とパンデミックの祈り

 「戦争は絶対にダメです」それは戦争を経験してきた世代の方々のことばです。お墓を通りかけると墓誌を見ることがあります。古いお墓には戦死者の名前がその場とが刻まれています。原爆や空襲の悲惨さという受けた傷、アジアの諸国を初めとする多くの惨禍ををもたらした罪の重さ、様々なものが引き裂かれた痛みと長く続くトラウマや心の重荷。一つもよいものはありません。痛みだけです。75年という歳月は生き証人が絶たれていくことを意味します。あと5年から10年すると体験者はこの国からいなくなるでしょう。
 1918-1920年、ちょうど100年前のスペイン風邪は米軍キャンプから始まり、戦争によって欧州に持ち込まれ、情報統制の中、中立国であったスペインが公にしたことでスペイン風邪と呼ばれるようになったと言われます。そして、第一次大戦の終結、第二次大戦の始まりにも大きく影響を与えたと言われます。
 戦争の原因はそれぞれの自国の利益です。それが通らないと力でねじ伏せようするのです。パンデミックは世界経済の行く末を変えます。まして、グローバルに繋がった世界でこれまでにない経済危機が今襲っていて、その先の見通しもついていません。そして、その収束後、どんな状態になっているのか、一気に経済が回って好循環をもたらすのか、あるいは格差や米中の対立がさらに深まるのか予測はつきません。
 私たちの国は憲法第九条に、「武力による威嚇又は 武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」との崇高な理想を掲げ続けてきました。それがゆえの信頼を世界から受けてもきました。それが脅かされるような事態が世界を覆い、75年の節目に100年前のパンデミックが襲っています。とりわけ目の前のことで周りや先を見通せなくなりやすい私たちですが、先に至るまで、これを守る国であるように祈り続けようではありませんか。