「戦争は決してしてはならない。」その惨禍を通り抜けた世代の先達はみなそれを語り伝えます。戦後79年、戦争をしなかった国は国連加盟193カ国の中でわずか8カ国に過ぎません。そのうちの一つに数えられていることは感謝なことですが、世界はそうではありません。そして時代と世代が変わると、かつてそう誓った思いというのは薄れ、忘れられていきます。
「神は隣人を作られたが、敵を作るのは私たちです。」アーネスト・ゴードンの言葉です。隣人には「汝愛すべし」という命令とそれに従う意思を与えてくださるのが神の恵みです。しかし、そこから遠く離れている世界の現実の中で、最も大切なことは一人一人の心に神の恵みと導きが宿ることです。その時、争いがないということ以上に、互いに愛し合う愛によって平和は実現するのです。
山上の説教には、「平和をつくる者は幸いです。その人は神の子どもと呼ばれるから」という教えがあります。そこに至るには順序があります。この教えの始まりは「心の貧しい者は幸い」ということばから始まります。それは、自分で自分のことがままならない弱い器であるいことを認めることです。世は「心強く」と言います。そして、強い者が成功者となり、礼讃されます。しかし、そこは神不在です。だから狭い門なのです。身を低くし、すべての鎧を降ろして、神抜きには生きられないとへりくだるところに神の国が始まるのです。
そして、罪に悲しみ、自らの争う獣を御霊によって柔和になだめ、一方で義しさを求め、隣人にあわれみ深く生きる者こそが、心のきよい者であり、平和をつくる者です。一足飛びにはいきません。「心貧しく」、神の愛と恵みによって生かされるところに常に立ち返ることから始まり、その志が地の塩、世の光として、世にあって平和の使者となることができるように小さな私を用いてくださいと祈ること、それこそが神の子どもの作る平和なのです。