イエスの誕生のストーリー、ヨセフはただ、二つのうちどちらを選ぶかを突きつけられました。目に見えることだけを信じるのか。それとも、目には見えないことだけれど、神がなさったことを信じるのかの二つです。目に見えることは、彼の許婚であるマリヤが身ごもっているという事実です。
　マリヤはヨセフの許嫁。マリヤにとっては、御使いが告げたことばを「神にとって不可能なことはひとつもない」と信じただけです。ところがヨセフにとっては、すべて言い訳に過ぎませんん。事実は事実、起こっている出来事がすべてです。ことを公にするか、内密に去らせるか。大きな傷を抱えながらもヨセフは一つの決断をしました。彼が心に決めたそのとき、しかし、まだ、すべてに納得がいったわけではありません。見える事実は事実としながらも、いったいどういうことなのだろうか。「思いを巡らしていた」と書かれていますが、釈然としない悶々とした思いを抱えたままだったのです。
　そこに夢の中に告げられたことば。ヨセフにとっては神の救いのご計画の一部を垣間見たに過ぎません。しかし、すべての疑問が解けました。たとえそれが人の常識ではあり得ないようなことだったとしても、世界の歴史のなかでただ一度しか起こらないことであったとしても、彼にとってはこれで十分でした。
　　人の世界、それはままならないことばかりの世界です。そして、最大の問題は神抜きに解決しようとするとき、解決し得ぬ問題を抱え続けるのです。そこに、イエスがお生まれになる。その意味は、「神我らとともにいまし。」神が人となって、私たちのところに来てくださった。そして、すべての傷みと悩みと苦しみとをともに負って、十字架の死をもって赦しと愛を与えてくださる。その愛をもって、いつもともにいてくださる。なんという慰め。なんという安心。なんという恵み。その神の素晴らしい恵みに心からの感謝を献げましょう。