ケアストーリーは突然に

 横浜での会議の帰り道、母から電話があり、「お父さんおかしいの」と言うではありませんか。大まかに話しを聞くと、脳外科の関連の病気らしいことがわかりましたが、耳が遠く電話での話が難しい母に説明するのも簡単ではなく、とにかく駆けつけることにしました。救急で入院手術をし、後遺症もなく安心しましたが、数日母と過ごして、サポートが必要であろうことが分かってきました。父に後遺症が残れば、「ケアストーリーは突然に」です。

 このことばは、TCUの福祉科で教鞭をとるI師のことば。父の見舞いに来てくださって、このことばを残して帰っていきました。彼は、筑波キングスガーデンで働くことから始まって、教会で喜楽希楽(きらきら)サービスという介護サービスを立ち上げ運営し、また、自らも親の介護を抱えて、多くの老いと介護、ケアを経験してきました。

 彼は言います。「人生を神様の御手の中で紡がれる物語と考えると、介護が始まるその時は人生の新しい物語が紡がれる時といえます。まだ先のこととか、自分には関係ないと思っていると、突然に「介護者」の立場に立たされる時もあります。それは試練ともなりますが、それまでの人生や家族関係を振り返り、新たな希望や絆を紡ぐ豊かな時間ともなれるのです。」

 そう、私たちの多くは大人になると親から離れていきます。またやがて、今度は親を見るときがやってきます。そして、その多くは突然に起こる場合が少なくありません。私たちのいのちはいつか終わりがきます。わかってはいても、まだ先、まだ先と思っている間に5年、10年があっと言う間に流れ、突然のようにその時がきます。でも、それはいのちの意味や絆をもう一度与えられる大切な時なのでしょう。私も改めて考えています。