人生の後半戦

 聖学院大学の藤掛明先生の「人生の後半戦とメンタルヘルス」という本を読みました。私自身、後半戦に入っている。そして、その自覚を感じるこの頃、なるほどとうなずけることが多くありました。

 「人生時計」というアイデア。自分の年齢を3で割るというのです。たとえば、15歳の中学三年生は、3で割ると5。午前5時。それはまだ夜明け前のスタート地点です。18歳なら午前6時。30歳なら午前10時。私の年になれば、17時、午後5時ですから、夕方近く。明らかに後半戦です。あるいは山登りの登りと下り、マラソンの折り返し。

 そして、大切なことがいくつかあると先生は教えてくださるのです。その中の一つは「もう一人の自分」との出会いです。それは人生の選択において、あの選択をしなければ今の私とは全く違う人生を送り、違う自分になったに違いないというような思いです。それを空想したり、「もう一人の自分」を生きている人に重ねて憧れたりもします。

 多くの人はそれを無視し、未練たらしいと忘れます。一部の人は、それこそ本当の自分だと思って日常を捨てますが、それは破綻を招きます。幸いな道は、「もう一人の自分」が現れたら、対話を続けて自分が人生で捨ててきたものを思い返し、もう一度自分に向き合って問い直すことだと言うのです。そうすると、新しい人生の風景が見えてきたり、さまざまなこれまで不平や不満であったことが統合されて理解できるようになったりする。「こんなはずじゃなかった」という思いよりも、みな受け入れる広い心。なるほど、そんなところを経てきた兄姉もおられることでしょう。そして、それは命を賜る主にあって初めてできることじゃないでしょうか。よきことも、そうでないことも主にあって恵みに変えられる。そうありたいものです。