職人さんの知恵、急がば休め

 お医者さんのT兄に聞きました。「どうして患者さんと毎日接しているのにカゼや病気がうつらないのですか。」「気合いだよ、気合い(笑)。」病は気からと言いますが、私たち人のからだというのは不思議なもので、なすべき務めの使命感をもって緊張しているときには、それが支えとなって病さえも追い出し、ことをなすことができるものです。

 一方で「ホッ」とその緊張が解けたとき、そのしわ寄せが来てドッと疲労感に襲われたり、病気になったりすることは少なくありません。上手にその体力やストレスを分散することができる人もいれば、上手にできない人もいます。私などは、「えいっ」と短期集中型ですので、その時には集中してことをしますが、後からドッと疲れがでるタイプです。人それぞれのタイプがあるものです。

 それでも、いいなぁと思うのは職人さんの10時、3時とお昼の休憩です。どんなに仕事が混んでいても、必ずその時間が来ると休憩します。お昼にはたいていお弁当を食べてのんびり体を休めます。場所を見つけてゴロッと横になっているのもよく見かけます。体力勝負の仕事、それは短期集中で仕事をしようと思っても続かないのです。一日に進むのはわずかであっても、何ヶ月も何年もかけて、コツコツと仕事を仕上げる忍耐深い持久戦だからです。

 そして、その休みを取らないと集中力が落ちて失敗をする、怪我をする。急がば休め。

箴言には「蟻のところへ行き、そのやり方を見て、知恵を得よ」(6:6)とあります。蟻ではありませんが、コツコツ、コツコツと仕事をすることにおいて、学ぶべき、教えられることがあるなぁと思います。地上で許されて生かされているいのちと日数、与えられた仕事と使命、どのようにそれを生かすのか、絶えず問いかけたいと思うのです。