この箇所は手紙の最後のあいさつ文です。
パウロは、「私の宿も用意しておいてください。あなたがたの祈りによって、私はあなたがたのもとに行くことが許されると期待しているからです」と言います。パウロにはイスパニアへ宣教する願い、また諸教会を訪問して励ましたいという願いがありました。一方、今は獄中。人は先行き見えず、自由を奪われ、拘禁されたような中にあっては、心がしぼんで、前向きにものを考えることができなくなるのが普通です。そんな中前向きなのは、「私を強くしてくださる方によって、私はどんなことでもできるのです。」(ピリピ4:13)という確信がその秘訣でした。
二つ目は「よろしく」というあいさつです。エパフラスはコロサイ出身者。このピレモンとオネシモの関係や状況を誰よりもよく知っています。マルコは大きな傷、伝道者として失格と烙印を押された過去を持っています。それが今受け入れられている。弱い者の思いを誰よりも知る者でした。アリスタルコはパウロと苦楽をともにした同労者、デマスは後に離れていく悲しみの人です。そしてルカ。医者である彼は博識豊かで頼りになる人物です。その5人がこのオネシモのこと、そして、奴隷と自由人という隔てを超えて一つとなる赦しと許しをともに「よろしく」とお願いしているのです。
そして、最後に祝祷のことばを重ねます。霊と言うとき、それは神が住むべき場書です。主イエス・キリストが住んでくださるべき場に、あなた方が場を空けて、その恵みによって生きるように。それがパウロの祈りです。
ピレモン書、聖書の中でも最も短い、しかも私信とでも言うべき書は、パウロの証の書でありました。そして、その私信にはパウロのキリストの愛にあふれた新しい生き方への招きが私たちにも届いています。それを私たちも日々の生活に「霊とともに」豊かにされることを祈ろうではありませんか。