「御国が来ますように」マタイ6:9-10

 「御国」と訳されていることばの原意は「あなたの王国」、英語ではKingdomと訳されます。国は国でも、王政、立憲君主制、合衆国などいろいろありますが、王国とは王が支配する国のことです。旧約聖書の最初の王から考えてみたいのです。

 イスラエルにおいてはアブラハム、イサク、ヤコブの族長時代からはじまって、それは民族になり、出エジプトを経てカナンに導かれます。そこでは東にアモン人、西にペリシテ人、南にモアブ人とエドム人、北にアラム人(シリア人)に囲まれ、常に緊張状態にありました。民は預言者サムエルの後継者のとして王を求めます。周りの国のように王を立て、強い国になりたいという願いです(1サムエル8章)。

 主は「わたしを退けた」と言い、王の務めと民の義務について語ります。一言で言うならば、「王は支配し、民は依存する」ということです。最初の王サウルは主の選びによって王とされましたが、へりくだって仕えることを忘れます。続く王たちは一様に同じでした。信仰の父に数えられるダビデにすら同じことが当てはまります。弟子たちが願ったのは、その王国の復興。そして、いつも話題に上るのは誰が一番偉いのか。そんなことでした。私たち人間は王になって支配するか、あるいは依存するか。その二つしかできない愚かな者にすぎません。

 神の国とは、王の王、主の主であられるイエス様が支配するところです。主は「天においても地においても一切の権威が与えられています」と言われる、罪と死に打ち勝つ支配です。その主が心の中に住んでいただくならここは神の王国。どんなときにも、どんなところでもその権威をもってご支配くださる。そのもとに委ねる平安があるのです。