ヤコブの死と葬り、それは国葬級の葬儀でした。ヨセフがこのエジプトでトップに立っていたとはいえ、彼がどれほどの敬意を受けていたのかを表すものでした。カナンへの埋葬はヤコブの遺言でしたが、それは、神の約束の民がエジプトへ埋もれてしまわないためです。
　その父の死後のことです。ヨセフの兄弟たちは「ヨセフはわれわれを恨んで、われわれが彼に犯したすべての悪に対して、仕返しをするかもしれない」（15）と言います。飢饉によってエジプトに来た兄弟たちはヨセフと涙ながらの赦しと和解をしたはずでした。それから17年、ところが、兄弟の中には、「しこり」が残っていました。実に過去の禍根というものは、ここまで尾を引くものなのです。私たちは、犯した罪過ちと与えた傷、受けた悩みと傷跡、それを消せずに抱え込むことがあるのです。そして、何かの折に再び自分を責め、相手を責める。芋掘りのように、蔓をたどって、また一つ、また一つと過去を掘り起こすのです。そして、奴隷にしてくれと言い出します。
　ヨセフの赦しはイエスの型であることを何度かお話ししてきましたが、イエス様の赦しをいただいた者たちに現れる心もまた、疑いや恐れです。「あなたがたは、人を再び恐怖に陥れる、奴隷の霊を受けたのではなく、子とする御霊を受けたのです。」（ローマ8:14-15）とあるように、赦されたにもかかわらず、入ってくる疑いと恐れをここでは奴隷の霊と呼びます。
　そのような兄弟たちに、ヨセフは「彼らを安心させ、優しく語りかけた。」のです。すべてのことが神の恵みのゆえに赦しと感謝に変えられた。そこから目を離すと、再び「奴隷の霊」が絶えず私たちを恵みから引き離そうとしています。そして疑いと恐れを引き起こすのです。しかし、それらすべてに打ち勝つ力が赦しにある。赦しがすべてを覆います。それを私たちはしっかりと握りしめて歩もうではありませんか。