「いっぽいっぽはここになくっちゃならないんだよ。」山田町の漁師Kさんの訴えです。震災から3年半、三陸は釜石と宮古の昼間に位置する山田町、震災前19,270人が暮らす漁村です。震災で4割強の家屋が全壊し、商店街はほぼ全滅、死亡者・行方不明者合わせて821人という大きな被災を受けました。町を離れた人も人口の一割、町の誰しもが大きな傷を負っています。
それだけの家屋が全壊ということは、一部損壊も合わせれば、避難所生活をしなければならなかった人たちは相当数に上ります。田舎の土地も家もゆとりあるところから一転しての狭い仮設生活、それはストレスが溜まるでしょう。そこに、OMFの支援プロジェクトとして建てられたのが「いっぽいっぽ山田」です。主にカフェスペースを提供しました。
安心してしゃべれる場は貴重です。私たちもそうですが、近すぎる人には言えないことがあります。それが瞬く間に噂話に拡がってしまったり、思いを知られたことで背後にある絡まった人間関係がさらに複雑になったりするからです。でも誰かに聞いて欲しい。聞いてもらえるだけで、楽になれる。だから、何も知らない他人の方がかえって話しやすいこともあります。田舎では長い関わりの中で、あの人だったらという人を持っていたりします。そうでなければ生きていけません。
ところが、その人が突然いなくなったらどうでしょうか。「いっぽいっぽ」はそういう場としてなくてはならないという人たちがいるのです。ここに来れば親身に話を聞いてくれる。ニコニコと気持ちよく受け入れてくれる。その背後におられるイエス様を知りたい。そういう人がポツリ、ポツりと与えられています。それは津波がきっかけで始まった働きですが、息の長い働きを通してキリストの証しを続けることを祈りましょう。