早さと時間と大切なこと1

 トンネルでもめています。リニアの南アルプストンネル工事を巡ってJR東海と静岡県の調整が付かないまま、2027年のリニア開通予定は延期になる見通しです。水問題をクリアにできないからです。計画中の南アルプストンネルは約25km、あまり知られていませんが、海中トンネルの青函トンネルを除くと、すでに東北新幹線の八甲田トンネルはそれを超える26.5km、岩手一戸トンネルは25.8kmでそれより長いのです。また建設中の北海道新幹線、函館近くの渡島トンネルは32.7kmとさらに長いトンネルです。
 道路や鉄道、交通網は「早さ」こそが最大善として作られてきました。かつて新幹線は夢の超特急でしたし、マイカーは憧れの的でした。ところが、その早さが当たり前になると元には戻れません。宅急便は日本中、翌日か翌々日にはどこでも届きます。通信手段も変わりました。学生時代、電話のない生活をしていた私のところにある日電報が届きました。よっぽどのことかと思って公衆電話をかけると、「一度打ってみたかった」なんて今となっては笑い話です。
 それでは早く便利になって幸せになったのかというと、それは難しい質問です。かえって時間にせき立てられるようになったのも事実でしょう。「人間が時間を節約すればするほど、生活はやせほそって、なくなってしまうのです。」これは児童文学者のエンデが『モモ』という本をして問いかけた言葉です。
 今、コロナ禍の中にあって、様々な制限があります。そのために時間の使い方も行動様式も変わりました。いままで惰性でしてたことは「なくてもいいじゃん」ということになりましょう。移動も限られています。その中にあって、本当に大切なことを見分けることができるように、そして、そのために神に与えられたいのちの時間を使うことができるようにと祈りたいと思います。