陸前高田市には一つだけ教会があります。1965年、森田牧師夫妻が、東北でひとつも教会がない市に開拓伝道するという重荷をもって、身一つで働きを始めた教会です。ゼロから何の支援もなく、主を頼りとしてご夫妻は始めました。
当時は天幕伝道をここ陸前高田、隣の大船渡ですると、多くの人が集まったそうです。特に子ども伝道に力を入れて、子どもたちがたくさん教会に導かれたそうです。それから46年。震災で町が壊滅。ちょうど甲府の伊勢町が海、そこから北が全部なくなり、積翠寺のあたり、ぽつんぽつんと残ったというイメージです。教会に子どもはもういません。若い人たちは仕事を求め、家族を養うために町を離れました。残された人たちと教会を守っているのです。
高台に位置する教会の3軒下まで津波は来て、先生ご夫妻も裏山へ逃げました。ライフラインを断たれ、「食べ物、食べ物」、「着るもの、着るもの」と形相変えて支援物資を持っていく人がいたと言います。不安で不安でしょうがなかった。そんな中、ご夫妻はイエス様が与えてくださるから不安はなかったと津波の写真を見せながら、様々お話しをしてくださいました。しかし、伊藤神学生が5月に来たときには、ことば少なく、笑顔も少なかったそうです。震災から7ヶ月、徐々に緊張が解けて、話せるようになったのです。
会堂には、ここを訪ねた方々の名刺、支援献金を送って下さった教会の名前を掲げ、全国で覚えられていることの感謝を希望にして下さっていることがわかりました。
「最後に、何か必要なもの、祈って欲しいことは何ですか」との問いに「魂です」と静かに語られたご夫妻。キリストだけが真の救い主でおられることをこの地で証しし続けておられる姿を目に焼き付け祈らされました。