大洪水の後、それはすべてがリセットされた新しい世界の始まりです。神は再び「生めよ。増えよ。地に満ちよ」と言われます。全焼のささげものをもって礼拝をささげるノアと一同に神は契約を結んでくださいます。それは再び大洪水によって地を滅ぼしはしないという契約で、そのしるしは虹でした。滅ぼされてしかるべき罪深い人が虹を見るたびにへりくだって祈るためです。
　10章には、セム、ハム、ヤペテの子孫たち、民族の起源が記されています。その広がりは南はインド国境から北はカピス海沿岸、西はスペイン、南はエチオピアに至るまで。そして、そこに最初の権力者ニムロデが登場します。猟師が勇士に、獣に向けた剣を人に向けて支配するようになります。もっとも世界には権威＝剣を与えて、秩序と富の分配をもって世界を治めるように主は権力者を立てています。
　しかし、権力を手にすると人は傲慢になります。そして、シンアルの平地、チグリス・ユーフラテスの古代文明が栄えた地に塔を建て始めます。神抜きの世界を造ろうとするときの合い言葉は「名をあげよう。われわれが地の全面に散らされるといけないから」です。人・モノ・カネを集中させて、思いがままにするために支配・従属・虐げ・貧富の差のヒエラルキー・階層社会を造ります。そのためのシンボルとしての偶像を造ります。それがバベルの塔です。
　神はことばの混乱を与えて傲慢に膨れあがった世界を散らされます。人間中心世界への警鐘です。散らされた世界で権力は分散しました。ですから、世界を一つに、そしてすべてを一つに支配しようなどという傲慢な目論みは果たせません。ところが今も同じ原理は働いていて、己のみが正しく絶対とする偶像を築こうとする力が世に働いています。それは必ず留められます。一方、権力とは無縁なセムの系図の中に、信仰の父アブラハム、そしてダビデ、救い主イエスへ繋がる一筋を与えておられるのです。