遺伝病と人のいのち

 N姉が会長をしておられる日本遺伝看護学会の学術大会に特別講演として招かれて、「いのちの尊厳~ひとりひとりの人格と向き合う~」というテーマでお話しさせていただき、皆さんとても真剣に耳を傾けて下さいました。講演の後、表皮水疱症、ダウン症、ハンチントン病、マルファン症候群、PKU、乳がん等の患者会、支援団体、看護の現場でのパネルディスカッション・報告等にも参加させていただきました。どれも聞いたことがない病名ですが、数が希少な遺伝病です。

 ヒトゲノム(遺伝子配列)解読完了宣言が2003年。それから約10年。先日はダウン症を中心とする出生前診断が大きな話題になりましたが、これを機会に少しばかり勉強させていただきましたが、一般にその認知はほとんどされていません。私も初めて触れることばかりでした。

 今、お金を出せば、自分の遺伝子を調べて、これから病気の可能性や傾向、それは癌や糖尿という比較的身近な病気までわかりますし、出生前ではなく、もともと持っている遺伝的傾向や病気がわかるのです。現在はその数が限られていますが、その範囲はどんどん拡がっています。

 医療技術の進歩には大きな恩恵がありますが、同時に遺伝に関わる優生学的思想は社会的のみならず、パーソナルに問われる時代になります。生むか生まないか、子どもをあえて持たない、あるいは結婚しない。先天的な病気を持つ者に対する差別など、相対的な価値観を持つ世の流れでは答えの見つからない迷宮に入り込みます。一方でキリスト者は絶対的な神を持つ者として答えを持っています。だからといって受け止めるのは簡単ではありません。いのちの尊厳と意味に悩む心痛める人たちに、自らも傷や悩みを抱えながらも、寄り添う者でありたいと思います。