鳥羽季義(すえよし)師とウイクリフ

 ウイクリフ聖書翻訳協会によると世界では2022年の統計で7,388の言語が使用されています。そのうち聖書全巻が724、新約1,617、部分訳1,248、合計3,589の言語に聖書は翻訳されました。ヨーロッパではラテン語の聖書が唯一である時代が長く続きました。 ジョン・ウィクリフが英訳したのは1380年代です。そして、ウィリアム・キャメロン・タウンゼントがウイクリフの名を冠して聖書翻訳協会を設立したのは1942年のことでした。少数民族のための聖書の必要を覚えたからです。
 日本の働きが始まったのは、働きに関心を持っていた当時高校生の福田崇師が米国の本部の宣教ニュースを翻訳し、「聖書翻訳」誌を発行したところから。翻訳の志のあった鳥羽季義師と出会い、1968年に日本ウィクリフ聖書翻訳協会を設立し、その第一号としてネパールに派遣されたのが鳥羽季義・イングリット夫妻です。
 ネパールは北海道の2倍くらいの面積に60もの言語があり、ネパール語を話すのは48%ほど。標差が80mからエベレストの8848m(笑)まで。山の尾根ごとに村があって、往き来も難しく、村独自の言語が使われていったというところなのです。現地で暮らし、言葉を聞き取り理解し、カリン語をローマ字表記して、カリン語・ネパール語の英語辞典を作るところからスタート。24年かけて新約聖書。さらに17年かけて旧約聖書を2011年に完訳。実に41年という長い年月、地道な作業を続けてこられました。
 「日本ではヘボン宣教師らが日本語に翻訳をしてくれたおかげで、私も聖書を読んで神様を信じることができた。まだ自分たちの言語でこのメッセージを聞いたことがない人がいたら、その人のために遣わされたいと祈った」という志を主に献げ、その生涯かけて主の器として用いられました。キリストの救いの素晴らしさ、それを自ら喜び伝えたいという情熱を私たちもと祈りましょう。